ヒゲの平成徒然草 1999年 10月27日号【第 54号】発行部数 ? ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ □■□■ □■□■ 内部結露 □■□■ 「見て下さいよ奥さん、よくこれで今までこの家が持っていたのか不思議でしょう」 現場監督の声に○子は一瞬何の事か解らずに戸惑っていたが現場監督が指差す 先を見て「あっ」と息をのんだ そこには25年暮らした愛着のある家が解体されていたが、 その柱が腐ってボロボロになり、回りにはカビで真っ黒くなった断熱材が目に入った 「この家は柱で持ってなくて、たまたま壁で持ってたんですよ」そう現場監督が続け た 「なんで?」○子の脳裏に25年前に見たこの家の棟上の姿が一瞬脳裏に浮かんだ 「内部結露ですよ」事もなさげに監督が言った 「私は寒がりだから、別にお金を払うんでグラスウールを二重に入れてください」 25年前にそう工務店に頼んだのは他でもない○子であった まさかそれが原因でやっとローンを払い終えた家を解体する事になろうとは ○子はもとより、家族もそれを請け負った工務店もその当時わからなかった いや、それより愛する子供達がアトピーになり、○子自身もめまいが続き病院 で自律神経失調症と診断される事になろうとは。 「湿気はどこからでも簡単にグラスウールに入ってきますからね、ましてこの 家はごていねいにグラスウールが二重になってるじゃないですかこれじゃあ家が腐る わけだ」 「でも、まさかこんなになるなんて」 ○子は改めて解体されている家を見ながら25年前を思い浮かべた 当時、日本は第二次石油ショックで、建物には省エネのためにグラスウールを 詰めた工法が最先端であった。 「これを詰めると冬暖かくて夏は涼しく、おまけに省エネの家が出来るんですよ」 工務店の社長がさも得意気にグラスウールを手に取りまくしたててていた。 「そう、じゃあお宅に注文するわ」 何も知らない若い夫婦が夢を託した 200*年 「これを詰めると冬暖かくて夏は涼しく、おまけに省エネの家が出来るんですよ」 工務店の社長がさも得意気にグラスウールを手に取りまくしたててていた。 「これを壁の中いっぱいに詰めこむんですわ、そうすればあんた 家がセーター 着ているようなもんですわ」 「ついでにペアガラスのサッシを1階だけ付けましょうや、ペアガラスのサッシは 絶対に結露しませんから」 「奥さん21世紀は健康住宅の時代ですよ」 「そう、じゃあお宅に注文するわ」 何も知らない若い夫婦が夢を託した ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ もどる